「上顎前突」とは文字通り、上の前歯が出ている「出っ歯」の歯並びのことを表します。叢生の場合は歯が並ぶスペースが足りなくてがたつきますが、歯がみんなそろって前に出てしまえば出っ歯になります。
下顎が生まれつき小さい、あるいは上顎が大きい場合、上下の顎のサイズの不調和で上顎前突になります(骨格性の上顎前突)。上の歯が奥歯から全て前に位置して生えていたり、下の前歯が内側に傾斜しているときも上顎前突になります(歯性の上顎前突)。
ここでも口呼吸による舌の位置の悪さが関与していることがあるのですが、特に頬圧に押されることで上の歯並びの横幅が狭くなってしまいます(V字型の歯列)。結果として上の前歯は前方へ出る、下顎は上の歯列が狭くてつっかえて後方へとどまる形になるのです。
上顎が大きい(過成長)、下顎が小さい(劣成長)という個性のほとんどは親からの遺伝です。
口呼吸の他に指しゃぶりなどの悪い癖(習癖)によって上の前歯を外に押し出し、下の前歯を内に倒すことで出っ歯が出来上がってしまいます。
成長期のお子さんの場合は、顎の側方拡大・下顎の成長促進・習癖の改善などで顎の正しい成長を促します。これらが基本ですが、お口の中の状態や成長の度合いによってできることとできないことがあるので、最適な組み合わせを提供します。
上下の歯にブラケット装置を装着し、全ての歯を3次元的に動かすことで歯並びを改善します。歯を抜いて(便宜抜歯)前歯を牽引する、上顎の拡大、奥歯を含めた全ての歯を後ろへ動かす(遠心移動)、下顎の前方誘導などを行います。上顎前突は大きく2つに分類され、ひとつは上下の前歯の距離が大きな所謂出っ歯(II級1類)、もうひとつは奥歯の関係が上顎前突で上の前歯が内向きに傾いた咬み合わせの深い状態(II級2類)です。II級2類の場合、下顎の動きに制約があるので顎関節症が起きやすくなります。また、下顎が著しく小さい小顎症の場合は手術で下顎の骨切りをして前方へ移動させることもあります。
症例分類 | 上顎前突 |
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主訴 | 出っ歯を治したい |
年齢 | 12歳1ヶ月 |
性別 | 男性 |
抜歯部位 | なし |
使用装置 | 拡大装置、咬合斜面板(取り外し式の矯正装置) |
治療期間 | 2年9ヶ月 |
保定装置 | 咬合斜面板 |
費用 | 相談料0円、検査料50,000円 動的矯正治療費330,000円 調整料6600円×30回分 保定装置料0円 |
リスク・注意点 | 上の顎の大きさに対して下の顎が小さく、上顎前突が生じている。 これらを改善するために、幅の狭搾している歯列を側方に拡大したのち、下顎の成長を促進した。 |
症例分類 | 上顎前突 II級1類 |
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主訴 | 前歯が出て咬み合わせが悪いことと下の歯が倒れているのが気になる |
年齢 | 28歳1ヶ月 |
性別 | 女性 |
抜歯部位 | 歯の表側からのマルチブラケットによる矯正装置 |
使用装置 | 拡大装置、咬合斜面板(取り外し式の矯正装置) |
治療期間 | 3年1ヶ月 |
保定装置 | 取り外し式保定装置 |
費用 | 相談料0円、検査料50,000円 動的矯正治療費935,000円 調整料6600円×36回分 保定装置料0円 |
リスク・注意点 | 上の顎の大きさに対して下の顎が小さく、さらに上下の個々の歯の大きさに対して上下の顎が小さく歯が並ぶスペースが不足したために大きなオーバージェットと叢生が生じている。 これらを改善するために、上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯を抜歯して、このスペースを用いて歯を排列した。 矯正での歯の移動のリスクとして歯根吸収、歯肉退縮が考えられます。 保定装置の装着時間が十分確保できない場合、叢生が再発する可能性があります。 |
症例分類 | 上顎前突 II級2類 |
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主訴 | 前歯ががたがたしているのを治したい |
年齢 | 19歳1ヶ月 |
性別 | 女性 |
抜歯部位 | 上下両側第一小臼歯 |
使用装置 | 歯の表側からのマルチブラケットによる矯正装置 |
治療期間 | 3年3ヶ月 |
保定装置 | 取り外し式保定装置 |
費用 | 相談料0円、検査料50,000円 動的矯正治療費935,000円 調整料6600円×30回分 保定装置料0円 |
リスク・注意点 | 上下の個々の歯の大きさに対して上下の顎が小さく、歯が並ぶスペースが不足したために叢生が生じている。 また下の臼歯に対して上の臼歯が前方に位置している。 これらを改善するために、幅の狭搾している歯列を側方に拡大したのち、上下両側第一小臼歯を抜歯して、このスペースを用いて歯を排列した。 矯正での歯の移動のリスクとして歯根吸収、歯肉退縮が考えられます。 保定装置の装着時間が十分確保できない場合、叢生が再発する可能性があります。 |